ビタミンA欠乏症と過剰症の栄養
ビタミンA (レチノール) は脂溶性ビタミンの1つで、主に動物性食品に含まれており、体内ではレチノール・レチナール・レチノイン酸といった3種の活性型で作用しています。ビタミンAは皮膚や粘膜の正常保持・視覚の正常化・成長および分化に関与しているため、不足すると皮膚や粘膜の乾燥・夜盲症・成長障害・胎児の奇形などを引き起こす恐れがあります。また、ビタミンAは脂溶性であることから過剰摂取にも注意が必要です。食品中には、ビタミンA以外に体内でビタミンAに変換されるプロビタミンA (ビタミンAの前駆体) というものがあります。プロビタミンAは主に植物性食品に含まれ、赤や黄色の色素であるカロテノイドがよく知られています 。
ビタミンAの欠乏症と過剰症
ビタミンAが不足すると、暗いところで目が見えなくなる“とり目”と呼ばれる欠乏症がおこることが知られています。これはビタミンAが不足し、目の角膜や粘膜がダメージを受け、症状が悪化すると視力が落ち、失明する場合もあるものです。現在の日本ではほとんどみられませんが、栄養状態がよくない発展途上国においては、年間約35万人もの子供達がビタミンA不足により失明しています。その他の不足の症状では、皮膚および粘膜の乾燥や角質化などが生じるため、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まって感染症にかかりやすくなります。
ビタミンA欠乏症:夜盲症(やもうしょう)
いわゆる”とりめ”と呼ばれる症状で、暗い所で物が見えにくくなる現象です。私達は、突然暗がりに入っても、目が周囲の暗さに徐々に慣れて、物がよく見えるてくるようになります。これを、暗順応といいます。このとき、関係しているのが網膜にある「ロドプシン」という物質です。明るい所にいるときは、ロドプシンが少ない状態ですが、急に暗がりに入ると、それに順応するためにロドプシンが増えて、暗いところでも物が見えるようになります。逆に、暗いところから明るい所にでると、これと逆の現象が起こります。ロドプシンは、網膜で光を感じるとその刺激を脳に伝える働きがあり、ビタミンAは、このロドプシンの主成分になっています。このため、ビタミンAが欠乏すると、暗い所で物が見えにくくなり、夜盲症になることがあります。また、ビタミンA の欠乏がさらに進むと、眼の角膜上皮細胞が未成熟になり、潰瘍(かいよう)ができたり、角膜が乾いて変質して、最終的には失明するケースもあります。
ビタミンA欠乏症:皮膚の異常
ビタミンAが欠乏すると、皮膚や粘膜などの表面の上皮細胞が角質化して、肌荒れや肌のかさつきがおこります。この上皮細胞は、身体の内部と外界の境目にあり、体内にウィルスや細菌が侵入してくるのを防ぐ、免疫力を保っています。つまり、ビタミンAの欠乏によって、身体の表面にある免疫力というバリアーが弱くなるため、カゼをひきやすくなったり、皮膚炎や口内炎にかかることも、多くなるのです。
ビタミンA欠乏症:成長障害
ビタミンAは、身体の骨や歯の成長にも関わっています。特に、成長期の子供がビタミンAの欠乏になると、身体の成長が十分でなかったり、知能障害などの症状がでることもあります。なお、具体的な摂取量やビタミンAが多く含まれている食べ物については、それぞれビタミンAの1日の摂取量や、ビタミンAが多い食品・食材をご覧ください。
ビタミンA欠乏症はどのように起こるのか
脂肪便症や胆道系障害などの脂質吸収不良、たんぱく質欠乏症、エネルギー欠乏症などにより、ビタミンA欠乏症が起こることがあります 。また、過度のアルコール摂取は、貯蔵されているビタミンAを消耗します。しかし、健康な人は体内にレチノイドを十分貯蔵しているため、不足する危険性はほとんどありません 。
ビタミンA欠乏症と栄養所要量
ビタミンAの所要量は以下の通りになります。厚生労働省が推奨している量を大幅に超える大量のビタミンAを継続的に服用する事でビタミンA過剰症になるリスクは高くなります。尚、平成21年の国民健康・栄養調査でのビタミンA摂取量は、男性でで平均551μgRE、女性は平均522μgRE摂取しています 。
ビタミンA栄養所要量と欠乏症予防の目安
ビタミンAの推奨量 | |
成人男性 | 750μgRE |
成人女性 | 600μgRE |
妊婦 | +70μgRE |
授乳婦 | +420μgRE |
※「日本人の食事摂取基準(2005年版)」による
※成人=18~49歳
ご参考:2003年 国民健康・栄養調査による摂取量(20~59歳平均)
男性:880μgRE 女性:863μgRE
ビタミンA欠乏症に関する情報
ビタミンAに関する詳しい情報ビタミンAの栄養所要量
ビタミンAの吸収を促進阻害する因子
ビタミンAが多く含まれている食品
ビタミンA過剰症
ビタミンA欠乏症