葉酸の栄養と働き
葉酸 |
プロテイルモノグルタミン酸 |
葉酸は、ほうれん草の抽出物から発見されたB群ビタミンの一種で、ラテン語の「葉」を意味する「folium」と「酸」を意味する「acid」からFolic acidと命名されました。しかし、実際の葉酸は葉酸活性を持つ構造類似体の総称で、生体内や食品中では多様な形態で存在し 、ヌクレオチド類の生合成やアミノ酸の代謝、タンパク質の生合成、ビタミン代謝に関与しています 。以前、葉酸はビタミンM、ビタミンBcと呼ばれていたこともあります。その名称と由来から植物性食品だけに含まれているように思われがちですが、動物性食品であるレバーなどにも多く含まれています。
葉酸の種類
通常の食品中葉酸 (プテロイルグルタミン酸) は、ほとんどが「ポリグルタミン酸型」 (複数のグルタミン酸が結合した形) ですが、加工食品などに添加されている葉酸は「モノグルタミン酸型」(グルタミン酸が一つ結合した形、プテロイルモノグルタミン酸) です。ポリグルタミン酸型葉酸は、消化管の酵素によって消化され、モノグルタミン酸型となった後、小腸の上皮細胞から吸収されます。食品中の葉酸の相対生体利用率はプテロイルモノグルタミン酸と比べ、25~81%と報告されており、2010年度版日本人の食事摂取基準では食事性葉酸の相対生体利用率を50%としています。
葉酸の栄養と消化・吸収
食品中の葉酸の多くは、ポリグルタミン酸型として存在しています。ポリグルタミン酸型葉酸は、食品の調理や加工、胃酸環境下において遊離します。遊離したポリグルタミン酸型葉酸は、小腸粘膜にある酵素によってモノグルタミン酸型葉酸に分解されてから小腸細胞内へ吸収され、小腸膜上皮細胞内で酵素によって5-メチルテトラヒドロ葉酸に変換されます 。その後、血漿を経由して体内循環し、門脈を経由して肝臓へ輸送されます。肝臓には、全身の約50%の葉酸が蓄積されます。また、蓄積された葉酸は、再び変換されて胆汁へ移行し、これが消化管から再吸収され、組織に供給されます (腸肝循環) 。
葉酸の栄養、妊娠初期の妊婦には重要なビタミン
補酵素型葉酸は、ヌクレオチド類の生合成やメチル基の生成転換系などに関与している。また、アミノ酸やたんぱく質の代謝などにも不可欠であり、リシン、セリン、メチオニンの代謝やビタミンB12とともに、ホモシスティンから、メチオニンの生成などにも関与している。葉酸は生体内ではビタミンB12とともに補酵素として働きます。また、葉酸は細胞分裂にかかわり、新陳代謝や十分な成長を促します。成長期の子どもや妊婦のように、細胞分裂が盛んな時期にはとくに必要とされる栄養素です。さらに、葉酸は遺伝子情報をのせたDNAを構成する核酸の成分合成にもかかわっています。葉酸はビタミンB12とともにホモシステイン代謝に関与し、ホモシステイン血中濃度を低下させて動脈硬化がおこりやすくなるのを防ぎます。また、赤血球の生成にかかわり、貧血を改善します。
葉酸摂取による妊婦へのメリット
最近の研究では、葉酸は妊娠の正常な維持と血管障害を予防する生理機能をもつことが注目されています。とくに、妊娠初期に葉酸を適切に摂取することで、胎児の神経管欠損と呼ばれる先天異常のリスクの軽減が期待できます。
葉酸の化学的特性
葉酸は水溶性のビタミンで、酸やアルカリには溶けますが、純水やエタノールにはほとんど溶けず、アセトン、エーテル、クロロホルム、ベンゼンには溶けません。また、光に対して不安定です。
葉酸の栄養所要量
国民健康・栄養調査結果から日本人の葉酸の平均摂取状況は十分な量であることから、通常の食生活では摂取不足による欠乏の心配はほとんどありません。しかし、妊娠中の女性では、葉酸の必要な量がふだんの2倍近くになることから不足しやすいため、積極的な摂取が望まれます。特に、若い女性が極端な食事制限によるダイエットで葉酸不足になっていた場合、初期の妊娠に気づかないで胎児へ悪影響を及ぼすことも心配されています。妊娠の可能性のある若い女性では、ダイエット時こそ緑黄色野菜などをきちんと食べ、食事の栄養バランスに気をつけることが大切です。
葉酸の過剰症、欠乏症を予防するため適正な栄養所要量
葉酸の栄養推奨量 | |
成人男性 | 240μg |
成人女性 | 240μg |
(妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性は、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、400μg/日の摂取が望まれる) | |
妊婦 | +200μg |
授乳婦 | +100μg |
詳しい葉酸の栄養所要量は、ここからチェックする事ができます。
※葉酸の上限量:1,000μg(成人男女、妊婦・授乳婦含む。プテロイルモノグルタミン酸としての量(通常の食品以外からの摂取量))
※「日本人の食事摂取基準(2005年版)」による
※成人=18~49歳
ご参考:2003年 国民健康・栄養調査による摂取量(20~59歳平均)
男性:308μg 女性:297μg
我が国における葉酸栄養摂取状況
平成21年の国民健康・栄養調査では、葉酸の摂取は、男性で平均301μg/日、女性で平均289μg/日摂取しており、男女とも推奨量を満たしています。
葉酸の欠乏症と過剰症
通常の食生活では、葉酸のとり過ぎによる過剰症はみられません。ただし、薬やサプリメントなどにより葉酸を大量摂取をし耐容上限量をこえて大量摂取した場合は、神経障害、発熱、じんましんなどの過剰症がおこるとの報告があります。葉酸の摂取には適切なご利用方法をこころがけてください。
葉酸には、過剰症状と欠乏症があります。
項 目 | 葉酸における具体的な症状 |
葉酸過剰症 | サプリメントの過剰摂取により、亜鉛の吸収阻害が知られている。葉酸過敏症として(1~10mg/日)として、発熱、蕁麻疹、紅斑、そう痒症、および呼吸困難が起こることも報告されている。 |
葉酸欠乏症 | 葉酸はビタミンB12とともに造血機能にかかわっているため、不足すれば巨赤芽球性貧血(悪性貧血。赤血球中に含まれるヘモグロビンが増えて赤芽球が大きくなり、通常より赤血球の寿命が短くなるために貧血傾向になる)を引きおこします。 |
葉酸が多く含まれている食品
葉酸は、広く食品に含まれていますが、特に多いのはレバーのほか、なばな、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーといった緑黄色野菜、いちごなどです。
葉酸含有量(可食部100g中) | 常用量(目安量) | ||
---|---|---|---|
なばな(生) | 340 | 80g(和え物1食) | 272 |
アスパラガス(生) | 190 | 100g(1束) | 190 |
枝豆(ゆで) | 260 | 30g(10さや) | 78 |
いちご(生) | 90 | 80g(5個) | 72 |
あまのり(焼き) | 1,900 | 3g(焼きのり1枚) | 57 |
ほたてがい(生) | 87 | 100g(1個) | 87 |
鶏レバー(生) | 1,300 | 40g(1個) | 520 |
玉露(浸出液) | 150 | 150g(1杯) | 225 |
葉酸を含む食品調理・加工をする際の注意点
葉酸はほうれん草から発見されたビタミンBの一種で、化学名はプテロイルグルタミン酸と言います。また、葉酸はDNAの形成や細胞分裂に必要で、とくに妊婦には胎児の成長のためにも欠かせない栄養素なので、別名“妊婦のビタミン”ともよばれています。妊娠初期には胎児の神経系統が成長しますが、この時期に葉酸が不足すると、脳神経に異常をきたし、神経管閉鎖障害などを引き起こす場合があります。重症なケースでは、二分脊椎や無脳症になる可能性があります。
葉酸摂取の目安
葉酸不足によるトラブルが生じるのは妊娠4週目頃までとされているため、妊娠が発覚した頃にあわてても、もう間に合いません。妊娠を考えている女性は日頃から葉酸を意識して摂取するようしましょう。また、妊娠全期間を通して摂取するのはもちろんのこと、授乳期になっても葉酸を多く摂取することは、ママにも赤ちゃんの成長にもプラスになります。
葉酸の歴史
葉酸の発見者は、アメリカのスネルです。1944年にアメリカのスネルらが、肝臓に含まれる悪性貧血予防因子がほうれん草にも含まれている事を発見し、「葉酸」と名づけたのが始まりです。葉酸の化学名はプテロイルグルタミン酸といいます。
葉酸に関する情報
葉酸に関する詳しい情報葉酸の栄養所要量
葉酸の吸収を促進阻害する因子
葉酸を多く含む食品
葉酸過剰症
葉酸欠乏症