パントテン酸の栄養と働き
パントテン酸 |
パントテン酸 |
パントテン酸は、「至るところに存在する酸」という意味で命名されました。この名前の通り様々な食品に含まれているので、通常の食事をしている人では不足することはまずありません 。パントテン酸は食事から摂取するほか、腸内細菌群によってもわずかに合成されます。パントテン酸はコエンザイムA (CoA) やホスホパンテテインなど、補酵素の構成成分として、生体内で重要な働きをしています。特に、TCAサイクルや脂質の代謝に深くかかわっているため、パントテン酸欠乏は、エネルギー代謝の異常や障害を起こします。
パントテン酸の栄養と消化・吸収
食品中のパントテン酸の大半は、CoAやホスホパンテテイン誘導体として、たんぱく質と結合した状態で存在しています。これらのCoA 及びホスホパンテテイン誘導体は調理・加工の過程や胃酸環境下で遊離型になり、腸内の酵素によって消化されてパントテン酸となった後、吸収されます。
パントテン酸栄養の働きと効果
パントテン酸は、補酵素として、次のような働きをします。
①.副腎の機能を助け、副腎皮質ホルモンの合成を促します。副腎皮質ホルモンには抗ストレス作用があります。
②.ナイアシンやビタミンB2と協力して働き、脂肪酸など、からだの構成成分の合成と分解を促進して、皮膚や毛髪、神経組織を正常に保ちます。
③.パントテン酸は、脂肪の代謝に役立ち、血液や細胞内にある余分なコレステロールを回収する善玉コレステロール(HDLコレステロール)の生成を促します
パントテン酸の化学的特性
パントテン酸は水溶性ビタミンの一種で、黄色の粘性液状物質です。中性には安定ですが、酸性、アルカリ性、熱には不安定です。
パントテン酸の栄養所要量
パントテン酸の所要量は以下の通りです
パントテン酸の推奨量 | |
成人男性 | 6mg |
成人女性 | 5mg |
妊婦 | +1mg |
授乳婦 | +4mg |
(参考)パントテン酸の栄養所要量
※パントテン酸の上限量は定められていません
※「日本人の食事摂取基準(2005年版)」による
※成人=18~49歳
ご参考:2003年 国民健康・栄養調査による摂取量(20~59歳平均)
男性:5.89mg 女性:5.17mg
我が国におけるパントテン酸の栄養摂取状況
平成21年の国民健康・栄養調査では男性で平均5.68 mg/日、女性で平均4.99 mg/日摂取しており、男女ともほぼ目安量を充たしているといえます。
パントテン酸の欠乏症と過剰症
パントテン酸には、過剰症状と欠乏症があります。項 目 | パントテン酸における具体的な症状 |
パントテン酸過剰症 | 特にありません |
パントテン酸欠乏症 | 皮膚や毛髪のつやが悪くなります。また、筋肉痛や知覚異常、手足のしびれ、疲れやすい、などの症状を引きおこすことがあります。多くの食品に含まれているため、通常、欠乏の心配はありません。 |
パントテン酸が多く含まれている食品
パントテン酸は、多くの食品に含まれていますが、とくにレバー、納豆、卵、落花生、魚類に多く含まれています。
含有量(可食部100g中) | 常用量(目安量) | ||
---|---|---|---|
納豆 | 3.60 | 40g(1パック) | 1.44 |
カリフラワー(生) | 1.30 | 50g(小鉢1杯) | 0.65 |
子持ちがれい(生) | 2.41 | 80g(1切れ) | 1.93 |
ししゃも(生) | 1.95 | 60g(3尾) | 1.17 |
鶏レバー(生) | 10.1 | 40g(1個) | 4.04 |
落花生(いり) | 2.19 | 30g(1皿) | 0.66 |
鶏卵(生) | 1.45 | 55g(1個) | 0.8 |
パントテン酸を含む食品調理・加工をする際の注意点
ビタミンB5とも呼ばれるパントテン酸は、水に溶けやすい水溶性のビタミンです。多くの食品に含まれているため、ギリシャ語の「どこにでもある」という意味から名付けられました。パントテン酸は、糖質や脂質、たんぱく質などの代謝を活性化する「補酵素」という大切な役割を持っており、体内のいろいろな化学反応を助けています。また、さまざまな食品から摂ることができ、腸内細菌によって体内でも合成されるため、不足することはほとんどありません。しかし、アルコールやカフェインの摂取によって吸収が阻害され、ストレスによって減少します。また、熱に弱く、酸やアルカリによって壊れやすい性質があるので、調理のときは加熱しすぎないなどの工夫が必要です。
パントテン酸の歴史
パントテン酸の発見者は、アメリカのウィルディアスです。1901年アメリカのウィルディアスが、酵母の生育因子である「ビオス」を発見しました。このビオスは、複数の物質から構成されていることが判明し、その中でも特に生物が広く利用する酸性因子を「パントテン酸」と命名しました。化学名もパントテン酸といいます。
パントテン酸に関する栄養情報
パントテン酸に関する詳しい情報パントテン酸の栄養所要量
パントテン酸の吸収を促進阻害する因子
パントテン酸過剰症
パントテン酸欠乏症
ビタミンB群について詳しい情報はこちらを参照