ビオチンの栄養
ビオチンは哺乳類では生合成ができないため必須の水溶性ビタミンです。食品から摂取するほか、腸内細菌によっても合成されますが、その合成量だけでは生体における必要量を維持できないと言われています。ビオチンは、生体において4種類のカルボキシラーゼ[ピルビン酸カルボキシラーゼ:PC, アセチルCoAカルボキシラーゼ:ACC,プロピオニル CoAカルボキシラーゼ:PCC, メチルクロトニル CoA カルボキシラーゼ:MCC]の補酵素として、カルボキシル化反応を触媒しています。これらの酵素反応は糖新生、分岐鎖アミノ酸、脂肪酸合成、エネルギー代謝などに関連しています。ビオチンは色々な食品に含まれているため、通常の食生活をしている人では欠乏症は起こりません。
ビオチン欠乏症は次の場合に起こります。
通常の食生活ではビオチンが不足することはありませんが、生卵白を多量に長期間にわたって摂取した人では、ビオチン欠乏症になる可能性があります。卵白に含まれているアビジン (糖タンパク) は、ビオチンと強く結合してビオチン-アビジン結合体を作るため、消化管でのビオチンの吸収を阻害するためです。また、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症やビオチニダーゼ欠損症などの先天性代謝異常症で欠乏症が起こることが知られています。抗けいれん薬を長期間にわたって使用している場合や長期間血液透析を受けている患者さんにもビオチン欠乏が疑われます。ビオチンは平成15年6月に指定添加物となりましたが、保健機能食品以外では使用不可となっています。乳児用調製粉乳への添加は認められていないため、特に治療用調整粉乳によるビオチン欠乏症が懸念されています。
ビオチン欠乏症の症状
ビオチン欠乏症は、体内のビオチンが欠乏する事により起きる症状で、具体的な症状は、食欲不振、吐き気、悪心、うつ症状、舌炎、蒼白、乾燥鱗片皮膚炎、筋肉痛、結膜炎、脱毛、運動失調、緊張低下、ケト乳酸アシドーシス、有機酸尿、けいれん、皮膚の感染、知覚過敏などが知られています 。
ビオチン欠乏症と栄養所要量
各年齢別のビオチンの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2010年版) は以下の通りです 。現在、国民健康・栄養調査の調査項目には入っておりませんが、食事から平均45.1μg/日摂取しているという報告があります 。
ビオチン欠乏症を予防する為の栄養所要量
栄養推奨量 | |
成人男性 | 45μg |
成人女性 | 45μg |
妊婦 | +2μg |
授乳婦 | +4μg |
(参考) ビオチンの栄養所要量
※上限量は定められていません
※「日本人の食事摂取基準(2005年版)」による
※成人=18~49歳
ビオチン欠乏症・過剰症に関する情報
ビオチンに関する詳しい情報ビオチンの栄養所要量
ビオチンの吸収を促進阻害する因子
ビオチンが多く含まれている食品
ビオチン過剰症
ビオチン欠乏症