ビタミンE欠乏症と栄養
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、天然にはα-、β-、γ-、δ-トコフェロールと、α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの8種類が存在します。その中でも、α-トコフェロールが最も生理活性が強く、生体内のトコフェロールの90%を占めています。ビタミンEは細胞膜や脂質に豊富に存在し、それ自体が酸化されることによって、多価不飽和脂肪酸の酸化を防止します。食品では、植物油 (コーン、大豆、サフラワー油) や小麦胚芽、種実類などに多く含まれます。
ビタミンEの欠乏症は次の場合に起こりやすいです
ビタミンEによる欠乏症は、無β-リポタンパク血症の患者や、長期に渡って脂質吸収障害があった場合は、ビタミンEの吸収が減少するため、血漿中のビタミンE濃度が異常に低い値になります。また、未熟児では、多価不飽和脂肪酸を多く含み鉄を添加された食事によって、血漿中のビタミンE濃度が低下する溶血性貧血が起こることが確認されています。
ビタミンE欠乏症の症状
ビタミンEは不足すると細胞膜の脂質が酸化され損傷されることから、ごくまれに感覚障害や神経症状がみられることがあります。未熟児では赤血球がこわれておこる貧血が知られています。
ビタミンE欠乏症:貧血(溶血性貧血)
ビタミンEが不足すると、体内にある活性酸素が増えて、細胞を保護する細胞膜に含まれる、不飽和脂肪酸という物質が酸化されます。不飽和脂肪酸が酸化されると、過酸化脂質という物質に変質して、身体に悪影響がでてきます。細胞膜が弱くなり、膜そのものが壊れることもあります。細胞膜の中でも、特に赤血球の膜はデリケートで、壊れやすい細胞膜です。赤血球の膜が壊れてしまうと、赤血球の役割である酸素と二酸化炭素を、運ぶことができなくなります。具体的には、通常、約4カ月ある赤血球の寿命が極端に短くなって、2週間以下で寿命が尽きてしまいます。このため、体内に新鮮な酸素が十分供給されず、貧血になってしまうのです。
ビタミンE欠乏症:血行障害
ビタミンEは、体内のいたるところに含まれていて、細胞が酸化されるのを防いでいます。もし、ビタミンEが不足すると、酸化された細胞膜が多くなり、細胞の老化が進み、細胞の寿命が縮むこともあります。血管でも同じことがおこり、血管の内壁に酸化されたコレステロールが沈着して、血行障害がおこり動脈硬化の原因になります。動脈硬化になると、血管全体や心臓の負担が大きくなり、その結果、高血圧や心臓病、脳卒中などの症状がでてきます。また、細胞が酸化されると、細胞が傷つくだけでなく、異常な細胞が生まれて、がんにつながることも、知られています。その他、女性に多い冷え性や肩こりなどは、血行障害が大きな原因になっている場合が多いのです。
ビタミンE欠乏症:肌のしみ
皮膚の細胞に含まれるリポフスチンという色素が酸化されると、それにたんぱく質が結びついて、肌のしみやくすみになります。(ある年令を過ぎると、肌にできる老人班に多い)ビタミンEは、この色素の酸化を防ぐので、肌にできるしみやくすみを、抑えることができます。
ビタミンE欠乏症と栄養所要量
平成21年の国民健康・栄養調査では、通常の食品から男性で平均6.8 mgα-TE、女性は平均6.4 mgα-TE摂取しています。また、補助食品から男性は平均1.2 mgα-TE、女性は平均2.1 mgα-TE摂取しています。*α-TEはα-トコフェロール当量の略です。
ビタミンE栄養所要量とビタミンE欠乏症の予防
ビタミンEの栄養推奨量 | |
成人男女 | 18~29歳 9mg 30~49歳 8mg |
成人女性 | 18~49歳 8mg |
妊婦 | +0mg |
授乳婦 | +3mg |
(参考) ビタミンEの栄養所要量
※ビタミンE上限量
成人男性:18~49歳
800mg
成人女性:18~29歳 600mg、30~49歳 700mg(妊婦・授乳婦含む)
ビタミンE欠乏症・過剰症に関する情報
ビタミンEに関する詳しい情報ビタミンEの栄養所要量
ビタミンEの吸収を促進阻害する因子
ビタミンEが多い食品
ビタミンE過剰症
ビタミンE欠乏症