ナイアシン欠乏症と栄養
ヌクレオチド (NAD) やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換され、酸化還元反応 (電子が供与体分子から受容体分子に転移する反応) に関与する酵素の補酵素として機能しています。また、NADが基質として利用されるADP-リボシル化反応にも関与しています。ナイアシンは食品からの摂取以外に、生体内で必須アミノ酸のトリプトファンから生合成することができ、食物から摂取したトリプトファンの1/60がナイアシンに転換されるといわれています。不足すると、皮膚炎・下痢・精神神経障害を主症状とするペラグラを引き起こす恐れがあります 。
ナイアシンの欠乏症は次の場合に起こりやすい
とうもろこしを主食としている人 (とうもろこしのトリプトファン含有量が低いため)、.ビタミンB6が欠乏している人、イソアニジド (抗結核剤) を使用している人、ハートナップ病・トリプトファン尿症・キサンツレン症候群などの代謝異常
ナイアシンの栄養とナイアシン欠乏症
ナイアシンは不足すると、食欲がなくなり、消化不良、皮ふの発疹がおこります。さらに不足すると、うろこ状に荒れる皮膚炎や、痴(ち)ほう、下痢などをおこすペラグラという欠乏症になります。ペラグラは、かつて中南米などにおいてトリプトファン含有量の少ないとうもろこしを主食とし、他の食品をあまり食べない地域で見られましたが、日本で通常の食生活をする場合はここまで不足する心配はほとんどありません。
ナイアシン欠乏症:皮膚炎(Dermatitis)
皮膚炎は、直射日光に当たる皮膚の部分が発病します。まず、患部が熱を持って熱くなり、かゆみがでたり、水ぼうそうができます。その後、皮膚が硬くなって、全体的にひび割れが起こってきます。
ナイアシン欠乏症:下痢(Diarrhea)
まず、胃腸が弱ってきて食欲不振になり、その後、腹痛や吐き気がひんぱんに起こります。そして、便秘と下痢を交互に繰り返すようになり、症状が進むと、慢性的な下痢になってしまいます。また下痢だけでなく、身体の粘膜が弱くなり、舌が赤くはれ上がったり、歯ぐきから出血したり、ただれたりする症状が起こることもあります。
ナイアシン欠乏症:認知症(Dementia)
ナイアシン(ビタミンB群)の欠乏が長期間続き、ペラグラが進行すると、不眠症や不安症があり、精神的にイライラしたりめまいや頭痛が起こってきます。そのまま放置しておくと、幻覚や知覚障害がでてきて、最終的には、中枢神経の障害が起こって、認知症になってしまいます。ペラグラの症状は、この3つの症状の頭文字をとって、3Dと呼ばれることもあります。繰り返しになりますが、日本での一般的な食事で、ナイアシンが不足することはほとんどありません。しかし、大量の飲酒や極端なダイエットを長く続けたり、インスタント食品ばかり食べていると、ペラグラのような欠乏症になることも十分考えられます。お酒もダイエットもほどほどにして、栄養のバランスを考えた食事を心がけましょう。
ナイアシン欠乏症と所要量
ナイアシンの毎日の実質必要量は、食物中のアミノ酸「トリプトファン」の量とナイアシン変換へのトリプトファン効率に左右されます。変換係数は、トリプトファン60ミリグラム対ナイアシン1ミリグラムでそれを1ナイアシン当量(NE)と呼びます。この変換係数は、食物摂取によるトリプトファン貢献度および、ナイアシンの推奨所要量の双方の算出に使用されます。
ナイアシン欠乏症にならない為の所要量は以下の通り
ナイアシンの推奨量 | |
成人男性 | 15mgNE |
成人女性 | 12mgNE |
妊婦 | 初期(16週未満)+0mgNE 中期(16週~28週未満)+1mgNE 末期(28週以後)+3mgNE |
授乳婦 | +2mgNE |
栄養機能性食品として | (下限値) 0.8μg |
(上限値) 60.0μg |
※上限量:ニコチン酸アミドで300mg、ニコチン酸で100mg(成人男女、妊婦、授乳婦を含む)
※「日本人の食事摂取基準(2005年版)」による
※成人=18~49歳
※ご参考:2003年 国民健康・栄養調
ナイアシン欠乏症・過剰症に関する情報
ナイアシンに関する詳しい情報ナイアシンの栄養所要量
ナイアシンの吸収を促進阻害する因子
ナイアシンが多く含まれている食品
ナイアシンの過剰症
ナイアシンの欠乏症